
きままな「あそまなブログ」
2024/12/29
ようこそ、ヒュナム洞書店へ
2024年本屋大賞(翻訳小説部門)第1位と帯のついている本、ファン・ボルム著『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』を購入しました。
駅から少し離れた住宅街にあり、本を購入するだけでなく座ってコーヒーを飲むこともできる「ヒュナム洞書店」が舞台です。
物語の主人公は、エリートコースを歩いていたものの、ある朝突然、燃え尽き症候群のようになり、仕事も辞め、離婚もして、母とも連絡を閉ざし、本屋を開いたという30代の女性ヨンジュです。
ヒュナム洞書店に集まる人々、就活に失敗してバリスタとしてヒュナム洞書店で働き始めたミンジュン、不登校の高校生のミンチョル、夫との関係に悩むコーヒー業者のジミ、なぜか編み物を持って店内に居座るジョンソ…何かを抱え一様に疲れた感じの人々が、少しずつ関わりあっていきます。
お互いを邪魔せず、お互いを尊重し、お互いを思いやり見守る…そんな心地よさ…が、ヒュナム洞書店に温かな空間を生み出しています。
いつのまにか、居心地の良さが人を招き、人と人をつなぎ、アイディアを生み出しイベントや映画会を開き、徐々に街の小さな書店の活性化につながっていきます。店主ヨンジュも何とか経済的に成り立つようにと奮闘し出す様子やバリスタ、ミンジュンとコーヒー業者ジミとの交流など、何気ない日常生活の繰り返しや会話から、それぞれが自分の居場所や大切にしたいものを見つけ歩き出します。
厳しい学歴社会、そして就職競争社会という韓国の社会状況を背景に生まれた『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』は、一気に答えが出て解決するような本ではないけど「疲れたら休んでいいんだよ、ゆっくり休んで本でも読もうよ」と、背中を優しくさすってくれるよう優しさに包まれます。
バリスタのミンジュン(学歴エリートコースを歩いていたけれど、就職で挫折した)が友人に話します。
「僕が何でもないように振るまっているとき、周りの人たちも本当に何でもないように振るまってくれたんだ。僕が何も話さなくても察してくれたのか、わざとらしい心配とか慰めの言葉をかけてくる人はいなかった、ありのままの僕を受け入れてくれる感じで、だから、わざわざ言い訳がましく説明する必要もなかったし、今の自分を否定しないでいられるようになったんだと思う。歳をとったらこんなことも考えるようになったんだ」
「まーた、カッコつけて。なんだよ、聞いてやるよ。どんなことを考えるようになったって?」
「いい人が周りにたくさんいる人生が、成功した人生なんだって。社会的には成功できなかったとしても、一日一日、充実した毎日を送ることが出来るんだ、その人たちのおかげで」
今年も素敵な出会いをたくさんありがとうございました!!心から、皆様に感謝です。
子どもたちが笑顔でいられる社会でありますように心から願います。
マキノに向かう途中、曇り空に虹のトンネルができていました。
来年こそ良い年になりますように!!